お向かいの南御堂さんでは、25日〜報恩講というものが催されています。
その一環でしょうか、「南御堂シアター」の第一回として 「石巻市立湊小学校避難所」という映画が放映されました。
無料のイベントですが、事前に申し込みが必要です。
毎日前を通る南御堂の前に宣伝の看板が立てかけられていましたので、 早速申し込んで見ることができました。
まずは、浪江町で語り部をなさっていたという吉川裕子さんが登場。
浪江町で震災当時何度も「ここへ」「あそこへ」と
訳も聞かされないまま避難を強いられたそうです。
今思えば、原発からの放射能が広がって行く方向に逃げたそうで、
「内部被曝はしてるわな」と福島弁でお話されました。
現在は大阪市に住む娘さんの勧めで堺市の公営住宅に避難され、
震災の語り部として活動されているとのことです。
福島から避難してきた人たちは、
家のドアに汚物を下げられるなどの嫌がらせにもあっている、
「早く帰れといわんばかりだ」とも
「放射能は伝染りませんから。キスしても大丈夫ですよ」と
冗談を交えて訴える姿も痛ましい思いがしました。
会場では驚きと、非難の声だと思いますが「えええ!」「そんな!」という声が上がりました。
福島弁でユーモアを交えて震災の実際をお話ししている姿に頭が下がります。
また、映画の中ではボランティア団体が歌を歌っている場面で
ウサギ追いし・・・「故郷」が流れると
「故郷は故郷がある人がふるさとを思って歌う歌で、 ふるさとがなくなった私たちによく歌うよね!」という厳しい意見も聞かれました。
確かに震災から3〜4ヶ月の段階で「ふるさと」は厳しいですね。
被災者の本音だと思いました。
押し付けのボランティアにならない取り組みが必要だと思いました。
しかし、映画は監督さんの「暗いものにはしたくなかった」というお言葉どおり、 笑いが随所にあり、人々の明るさに驚きます。
4月21日〜10月11日に避難所が閉鎖されるまで、そこに泊まりこみ、
避難者に寄り添いながらカメラを回し続けた監督の思いは確実に伝わってきました。映画『石巻市立湊小学校避難所』 映画『石巻市立湊小学校避難所』公式サイト
70歳になるという愛ちゃんと呼ばれる一人住まいのおばあさんと
10歳の誕生日を避難所で迎えた女の子の 避難所での触れ合いを捉えて、
二人のそれぞれの悲しさに迫っています。
当たった仮設住宅に引っ越した愛ちゃんが部屋の隅で
「氷が溶けると水になる。凍っていた心が溶けてきて、涙が止まらない」と
ボロボロと泣きます。
愛ちゃんが避難所を去るときに
一人の男性が嫁入りの時に歌う「長持唄」を餞に朗々と謳います。
愛ちゃんは「一度もお嫁に行かなかったけど、これで満足、親戚ができたから」 といいます。
避難所でできた絆がまた、バラバラにされていく、
避難した先でまた良い出会いがありますようにと願わずにはいられません。
映画撮影終了から1年が経ちますが、まだ復興計画すら目に見えません。
それでも、人々は毎日を生きていかなければならないのだと改めて考えさせられました。