散骨に関する記事

海洋散骨は違法?日本の法律・ガイドライン・必要な許可を解説

海洋散骨は違法?日本の法律・ガイドライン・必要な許可を解説
手元供養の未来創想

著者紹介

手元供養の未来創想 編集部

手元供養専門店|創業2000年

手元供養の専門店として25年。遺骨の供養に関するさまざまなご相談をいただくなかで、散骨についてのお問い合わせも多くあります。その経験をもとに、海洋散骨の法律面について詳しくお伝えします。

「海洋散骨って、法律的に大丈夫なんだろうか」。故人の遺志を叶えたい、あるいはご自身の終活として考え始めた方から、こうした不安の声をよくいただきます。

先に結論を書きます。海洋散骨を直接禁止する法律は、日本にありません。節度を守って行う限り、罪に問われることはない。これが現在の公的な解釈です。

ここから先は、その根拠を一つずつ確認していきます。「とりあえず違法ではないと分かれば十分」という方は、まとめまで読み飛ばしても差し支えありません。


なぜ「違法ではない」と言えるのか

刑法190条「遺骨遺棄罪」との関係

「海に撒くなんて、遺骨を捨てているようなものでは」——漠然とそう感じる方は少なくありません。実際、この不安の根っこにあるのが刑法190条です。遺骨を損壊・遺棄・領得する行為を処罰の対象とする条文で、撒く行為も、粉にする行為も、字面だけ見れば「遺棄」や「損壊」に見えてしまいます。

ここで手がかりになるのが、1991年(平成3年)の出来事です。市民団体「葬送の自由をすすめる会」が神奈川県沖(相模灘)で日本初の海洋散骨を行った際、法務省は「刑法190条が守ろうとしているのは、死者に対する社会的な宗教感情であり、葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り問題ない」という見解を示したとされています。ただし、これを記した公式な文書は見つかっておらず、口頭での見解だったとされています。とはいえ、この考え方は以後の行政・業界団体の判断の土台になっており、現在まで覆っていません。裏を返せば、粉骨せずに撒く、人目のある場所で撒くといった、節度を欠いた撒き方をすれば、刑法190条の遺骨遺棄罪に問われる可能性が出てくるということでもあります。

墓地埋葬法(墓埋法)との関係

お墓や納骨堂への埋葬・埋蔵には、「墓地、埋葬等に関する法律」が関わります。この法律の第4条は、埋葬や焼骨の埋蔵を墓地以外の区域で行うことを禁じています。

対象になるのは、あくまで「埋蔵」です。海に撒くのは、土に埋めるのとは違う行為です。厚生省(現・厚生労働省)も、散骨は法律の制定当時に想定されていなかった行為であり、公衆衛生や国民感情を著しく損なわない限り規制の対象にはならない、との立場を示してきました。墓埋法は、そもそも散骨を想定していない法律だ、と言い換えてもいいかもしれません。

海洋汚染防止法・廃棄物処理法との関係

船から海へ物を投じる行為には、海洋汚染防止法や廃棄物処理法も関わってきます。ここでも判断基準は同じです。節度をもって行われる限り、遺骨は廃棄物にあたりません。

ただし「何でも流していい」わけではないのです。金属、プラスチック、ビニール、ガラス——自然に還らないものを、遺骨と一緒に海へ流さないでください。献花や献酒も、量が過ぎれば環境への配慮を欠きます。


判断の物差しになる4つのガイドライン

法律そのものが散骨を想定していない以上、この「節度」を具体的に示しているのがガイドラインです。1991年の最初の海洋散骨から30年以上、法律そのものが新しく作られたわけではありませんが、行政と業界団体が、この間に具体的な基準を積み重ねてきました。現在、大きく4つが存在します。

① 厚生労働省「散骨に関するガイドライン」(2021年3月)

散骨事業者向けに厚労省が公表した文書です。粉骨は目視で遺骨と判別できない状態まで行うこと、散骨海域は関係者の目に触れにくい場所を選ぶこと、散骨証明書を発行することなど、事業者が守るべき基準を具体的に示しています。

② 国土交通省「海事関係法令の解説」(2023年9月)

船を使って散骨を行う事業者向けに、国交省が公表した文書です。旅客を乗せて運航する以上、海上運送法をはじめとする海事法令を守る必要がある、という立場を明確にしています。

③ JOMA(日本海洋散骨協会)のガイドライン

業界団体であるJOMAが独自に策定しているガイドラインです。厚労省のガイドライン公表を受けて内容が改定されており、加盟事業者はこれに沿った運営を求められます。加盟事業者に付与される「ブルーハートマーク」は、このガイドラインを守っているという一つの目印になります。

④ 自治体のガイドライン・条例

一部の自治体は、独自にルールを定めています。ここが少しややこしいところです。


自治体のルールは「条例」と「ガイドライン」で性格が違う

自治体の規制を調べていると、「条例」と「ガイドライン」という2つの言葉が混在していることに気づきます。この2つは、実は対象にしているものが違います。

条例の多くは、陸上の「散骨場」(散骨のための施設)の経営を対象にしています。全国で条例を持つ自治体は10以上ありますが、経営には市長・町長の許可が必要と定めるものが大半です。そのうち、違反した場合に懲役や罰金の罰則規定を置いているのは静岡県御殿場市・三島市、神奈川県三浦市の3市のみで、静岡県熱海市・伊東市、神奈川県湯河原町・箱根町などは、改善勧告や許可の取消し、公表といった行政上の措置にとどまり、罰則規定は置いていません。いずれにしても、これらは海洋散骨そのものではなく、陸上に散骨用の施設を作る事業を規制するものです。

一方、海洋散骨そのものに向けられているのは、多くの場合「ガイドライン」です。罰則のない、自主的なルールという位置づけです。実は熱海市・伊東市はどちらも、陸上の散骨場を規制する条例をすでに持っていますが、「海での散骨には、この条例は適用されない」として、別途ガイドラインを策定しています。熱海市は2015年7月、事業者向けのガイドラインで、市内の陸地(初島含む)から10km以上離れた海域で行うこと、海水浴シーズンの実施を控えること、「熱海」を連想させる宣伝文言を使わないことなどを求めています。伊東市も2016年2月、陸地から6海里(約11.11km)以内での散骨を控えるよう、独自の指針を定めています。

強制力がなくても、これを無視した業者はその地域での営業を続けにくくなります。逆に言えば、こうした地域独自のルールまで把握して運営しているかどうかが、業者の丁寧さを見分ける材料になります。撒きたい海域が決まっている場合は、その地域に何か制限がないか、業者に聞いてしまうのが早いです。


船を使う場合に必要な「許可」「登録」

遺骨を撒く行為とは別に、船を出して人を乗せる部分にも法令が関わってきます。乗船して散骨を行う以上、海上運送法をはじめとする海事関係の法令の対象になるのです。

海上運送法では、旅客定員が13名以上の船舶で運航する場合は「許可」、12名以下の場合は「登録」が必要と定められています。これに加えて、安全管理規程の届け出、運航管理者の選任、そして船客損害賠償保険の締結が求められます。この保険は業者の任意サービスではなく、法令上の要求です。

散骨を専門に扱う業者であれば、こうした手続きは済んでいるのが前提です。JOMA(日本海洋散骨協会)は、こうした許可・届け出の状況を含めて加盟審査で確認しているとしています。ご自身で一つひとつ確かめる必要はありませんが、気になる場合は「旅客を運送するための許可(または登録)はお持ちですか」と、直接聞いてしまって構いません。


個人で船を出して散骨することはできるか

業者に頼まず、個人で所有する船やチャーターしたプレジャーボートで散骨したい、という相談もときどきあります。結論としては可能です。ただし、守るべきルールが減るわけではありません。

粉骨や散骨海域についての考え方は、業者が行う場合と変わりません。加えて、船の航行そのものについて、海上衝突予防法や港則法といった海事法規を守る必要が出てきます。港内や航路の中での散骨は避けてください。海事法規への理解がないまま実施すれば、事故やトラブルにそのままつながります。

  • 遺骨は2mm以下まで粉骨してから撒く(見た目に遺骨とわからない状態にする)
  • 海水浴場・漁業区域・港内・航路の近くは避ける
  • 陸地からの散骨は、土地の所有者の許可が必要
  • 船を出す場合は、海上衝突予防法・港則法などの航行ルールを守る

専門知識がない場合は、無理に自分だけで抱え込む必要はありません。粉骨だけを専門業者に依頼することもできますし、海域の選び方についても、多くの業者が予約前提ではない無料相談を設けています。聞くだけなら費用はかかりません。


違法・トラブルにつながりやすいケース

法律そのものに違反しなくても、節度を欠けば話は変わります。次のようなケースは、法的なリスクやトラブルに発展しやすいところです。

  • 粉骨が不十分で、遺骨とわかる状態のまま撒いてしまう
  • 海水浴場や漁業区域、港内、航路の近くで実施する
  • 自然に還らないもの(金属・プラスチック・ビニール・ガラス等)を一緒に海へ流す
  • 自治体が定めるガイドラインの対象海域を守らずに実施する
  • 旅客運送の許可・登録を持たない船で、乗船プランを実施する

いずれも、法律というより「節度」の範囲に収まるかどうかが分かれ目です。信頼できる業者は、この境界線を心得たうえで運営しています。業者選びの視点は海洋散骨とは?完全ガイドでも詳しく扱っています。


実際の手続きについて

法律面での不安が晴れても、実際に業者へ依頼する段になると、必要書類や、墓じまいを伴う場合の改葬許可の要否など、また別の確認が出てきます。これは法律の話というより、墓地の管理者や役所とのやり取りの話です。申し込みから当日までの実務的な流れは、手続きをまとめた記事で確認してください。

よくある質問

Q. 海洋散骨は法律違反になりますか?

直接禁止する法律はありません。1991年、日本初の海洋散骨が行われた際、法務省は葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り刑法190条の遺骨遺棄罪にはあたらないとの見解を示したとされています。粉骨が不十分だったり、周囲への配慮を欠いた撒き方をしたりすると、この前提が崩れる可能性があります。

Q. 散骨をするのに、国や自治体の許可は必要ですか?

散骨という行為そのものへの許可制度はありません。ただし船で人を運ぶ部分には、海上運送法にもとづく許可または登録が必要です。加えて、一部の自治体は独自のガイドラインで散骨海域や宣伝文言を制限しています。

Q. 個人で船を出して散骨しても違法にならないですか?

個人で行うこと自体は違法ではありません。ただし、粉骨や散骨海域についての考え方は業者が行う場合と同じで、船の航行に関する海事法規も守る必要があります。専門知識がない場合は、部分的にでも業者に相談することをおすすめします。

Q. 熱海や伊東の海で散骨してはいけないのですか?

禁止されているわけではありません。両市とも、陸地から一定の距離を離れた海域での実施を求めるガイドラインを定めています。罰則のある条例ではありませんが、地域への配慮として守っておきたいルールです。

Q. 業者に依頼すれば、法律面は業者に任せておいて大丈夫ですか?

基本的にはそうです。JOMAに加盟していたり、長く運営を続けていたりする業者であれば、こうした基準は当然のように満たしています。ご自身で細かく調べる必要はありません。

Q. すでに埋葬している遺骨を取り出して散骨したいのですが、手続きは必要ですか?

墓地から遺骨を取り出す際、管理者が改葬許可証の提示を求めることが多く、実務上は取得することになるケースが少なくありません。対応は自治体で分かれるため、お墓のある市区町村に確認してください。詳しい手順は、手続きをまとめた記事で解説しています。


まとめ

海洋散骨を直接禁止する法律はなく、節度を守って行う限り違法にはなりません。この「節度」を具体的な行動に落とし込んでいるのが、厚労省・国交省・JOMA・自治体という4つのガイドラインです。船を使う以上、海上運送法にもとづく許可や登録も欠かせません。

行政、業界団体、自治体。それぞれが、この十数年で判断基準を積み重ねてきました。信頼できる業者に任せれば、こうした基準はすでに満たされています。ご自身で細かく確認する必要はありません。不安な点があれば、遠慮なくお問い合わせください。

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