著者紹介
手元供養専門店|創業2000年
手元供養の専門店として25年。遺骨の供養に関するさまざまなご相談をいただくなかで、散骨についてのお問い合わせも多くあります。その経験をもとに、山への散骨について詳しくお伝えします。
散骨といえば海のイメージが強い。それでも、山を選ぶご遺族は実際にいます。
山への散骨が選ばれる理由
山への散骨の特徴は、海とは少し違います。もっとも大きいのは、その場所を、あとから訪ねられる可能性が残ることです。業者が所有する森や、ご家族の所有地に散骨した場合、海のように「どこに還ったか分からなくなる」ことがない。命日やお盆に、足を運ぶ場所として使えます。
墓石の購入費や年間の管理費がかからない点は、海洋散骨と共通です。継ぐ人がいない、遠方で管理が難しい。そうした事情から選ばれるのも同じです。そのうえで、登山や山歩きが好きだった、育った土地に山があった——個人的なつながりから、あえて山を選ぶ方もいます。
良いことばかりではありません。撒く場所が土地の所有権や自治体条例に左右される、山ならではの制約もあります。以下、注意点も含めて整理します。
山と海、どちらを選ぶか迷ったら
法律上の扱いに、大きな差はありません。違うのは、実際の使い勝手です。
山への散骨は、業者が所有する土地であれば、あとからその場所を訪ねられます。海に比べて「戻れる場所」が残りやすいのは事実です。ただし条件つきです。業者や土地所有者が、その場所を維持し続けることが前提になります。所有者が変わる、土地が売却される。その可能性はゼロではありません。
海洋散骨は、特定の場所には戻れません。その代わり、業者の運営体制や広さに左右されにくいという面があります。優劣の話ではありません。故人の希望や、ご家族がその後どう過ごしたいかで選ぶものです。海洋散骨については海洋散骨とは?完全ガイドで詳しく解説しています。
法律面で押さえておきたいこと
山への散骨そのものは違法ではありません。そのうえで、海洋散骨にはない制約があります。もっとも大きいのが「誰の山に撒くか」という土地の問題です。
関わる法律は、海でも山でも基本的に同じです。刑法190条の遺骨遺棄罪、墓地埋葬法(墓埋法)。どちらも、節度をもって行う散骨を禁じていません。墓埋法が規制するのは「埋蔵」——土に埋める行為です。地表に撒く行為はこれにあたらない、というのが現在の法解釈です。
ここで山ならではの注意点が出てきます。穴を掘って遺骨を埋め、土をかぶせる行為は、墓埋法の「埋蔵」にあたり違反です。地表に撒く形にとどめてください。同じ理由で、墓標や石碑を立てることも認められていません。目印にしたければ、周囲の木や岩の位置を覚えておく、写真を残しておく。その程度の工夫が現実的です。
誰の山にでも撒けるわけではない
山への散骨で最初につまずくのが、この土地の問題です。民法上、土地の所有者はその土地を自由に使用・処分できます(民法206条)。裏を返せば、他人の土地に無断で立ち入り、遺骨を撒くことはできません。
選べる場所は、次の3パターンに絞られます。
- 自分(またはご家族)が所有する山や土地
- 土地の所有者から個別に許可を得た場所
- 散骨業者が所有する土地(業者に依頼する場合)
国有林や自治体所有の土地も、公用・公共用以外の目的での使用は原則認められません。所有者不明の山、なんとなく人目につかなそうな場所。そういう選び方は避けてください。トラブルになったとき、事情を説明できる根拠がなくなります。
業者に依頼しても、所有権の問題が消えるわけではありません。信頼できる業者は、どの土地に散骨するのか——自社所有地か、正式に借りている土地か——を説明できます。逆に、散骨場所についての説明があいまいなまま代行だけを引き受ける業者は、避けたほうが無難です。遺骨を預かりながら不適切に扱う業者が存在するという指摘も、複数の情報源で見られます。実績や所在地は、契約前に自分の目で見ておいてください。
自治体の条例で禁止されている場所もある
土地の所有権をクリアしても、それで終わりではありません。自治体が条例で散骨を規制している場合があります。差が大きく、大きく3パターンに分かれます。
- 散骨そのものを禁止する条例:北海道長沼町・宮城県松島町・熊本県南阿蘇村など。墓地以外での焼骨の散布を、個人・業者を問わず禁じています
- 原則禁止で、届出をすれば認める条例:埼玉県秩父市・鹿児島県伊佐市など
- 散骨場(散骨のための施設)の経営を許可制にする条例:静岡県御殿場市・三島市、神奈川県湯河原町・箱根町など、数としてはこのタイプが最多です
特に注意したいのが埼玉県本庄市です。散骨場を設ける際、隣接する全ての土地所有者の同意が要ります。加えて、建物や道路・河川から100〜300m以上離れていること。実質的に、新たな散骨場を作るのはほぼ不可能な内容です。
これらの条例は、個人が自分の山に散骨する場合にも適用されます。散骨したい場所が決まっているなら、市区町村の役所に条例の有無を先に聞いてしまうのが早い。
海洋散骨なら、船を出して沖合まで進めば、陸地の条例が及ぶ範囲から外れます。山への散骨はそうはいきません。撒く場所そのものが規制対象の土地に含まれるかどうか、それがそのまま可否を決めます。海と山でもっとも実務が変わる点です。
山での散骨で知っておきたいこと
粉骨は必須
海洋散骨と同様、遺骨は2mm以下の粉末状(パウダー状)にしてから撒きます。骨の形が残ったまま撒くと、見つけた人が事件と誤解して通報する可能性があります。業者に一括で依頼する場合、この粉骨も含まれているのが一般的です。粉骨だけを別の専門業者に依頼するという選択肢もあります。
天候に左右される
山は平地と気象条件が違います。台風・大雨・積雪・路面凍結の時期は、業者側の判断で日程が変更になることがあります。立会いプランで現地に行く場合は、延期になった場合の扱いと追加費用の有無を、契約前に聞いておいてください。
火の扱い
線香やろうそくを供える場合、落ち葉や枯れ枝が多い山では、ちょっとした火の不始末が山火事につながります。信頼できる業者であれば、この点は当然踏まえたうえで進行してくれます。個人で行う場合は、複数人で確認しながら消火するなど、特に注意が必要です。
お供え物は持ち帰る
献花や供物を捧げること自体は問題ありませんが、環境保護の観点から、自然に還りにくいものは持ち帰るのが原則です。金属・プラスチック・ビニールなどは特に注意してください。
すでに埋葬している遺骨を取り出す場合
お墓に納めている遺骨を取り出して山へ散骨する場合、多くのケースで改葬許可証が関わってきます。法律上、散骨は「他の墓地への移動」ではないため改葬に厳密にはあたらないとする解釈もありますが、実務では墓地の管理者が遺骨を出す条件として改葬許可証の提示を求めることが多く、結局は取得することになりがちです。対応は自治体で分かれるため、お墓のある市区町村の窓口で聞いてください。
費用の目安
| 方法 | 費用目安 |
|---|---|
| 粉骨のみ業者に依頼 | 1万〜3万円程度 |
| 業者に一括依頼(立会いなし・代行) | 10万円前後 |
| 業者に一括依頼(立会いあり・セレモニー) | 20万〜30万円程度 |
海洋散骨と同じように、山への散骨も立ち会うかどうかで価格帯が変わります。業者が代行してくれる委託プランは比較的安く、ご家族が現地に赴いてお別れのセレモニーを行うプランは、その分費用が上がります。料金には散骨証明書の発行や、案内・送迎の費用が含まれるのが一般的です。複数の遺骨をまとめて散骨する場合、2柱目以降は1柱ごとに追加料金がかかることが多いので、事前に見積もりを取ってください。
粉骨も散骨も自分で行い、費用をかけずに済ませることは、法律上は禁じられていません。ただし、この方法を実際に行った人の記録はほとんど見当たらず、多くの方が粉骨だけでも業者に任せているのが実情です。時間と労力がかかりますし、身内の遺骨を自分の手で砕く作業に、精神的に踏み切れない方もいます。加えて、費用をかけない場合でも、その土地のある自治体が散骨を規制する条例を持っていないかは必ず調べてください。土地を所有していることと、そこで散骨してよいことは、別の話です。
全部撒くか、一部を手元に残すか
山への散骨も、海と同じくやり直しがききません。一度撒いた遺骨は、あとから回収することはできません。
全部撒くか全部残すかの二択ではなく、大半を山へ還し、ごく一部だけを遺骨ペンダントやミニ骨壷に納めておく方法もあります。粉骨のタイミングで分けておけば、費用も手続きも大きくは変わりません。散骨する前に、ご家族で一度話し合っておくことをおすすめします。
墓じまいで出た代々のご遺骨をこの機会にまとめて山へ、という場合は、柱数が増える分だけ粉骨と散骨の費用が上乗せされるのが一般的です。事前の見積もりで、何柱分の粉骨・散骨になるかを業者に伝えておいてください。
よくある質問
Q. 業者に依頼するメリットは何ですか?
業者が所有する土地に散骨できるため、土地所有権の問題を自分で解決する必要がなくなります。粉骨から散骨証明書の発行まで一括で任せられる点も、個人で行う場合との大きな違いです。
Q. 粉骨だけ業者に頼んで、散骨は自分で行うことはできますか?
できます。粉骨だけを代行する業者があります。ただし散骨する場所については、所有権や自治体の条例をご自身で調べる必要があります。
Q. 山への散骨は違法ですか?
散骨そのものは違法ではありません。ただし、土地には必ず所有者がおり、無断で他人の山に散骨することはできません。また、遺骨を埋めて土をかぶせる行為は墓地埋葬法違反になります。地表に撒く形にとどめてください。
Q. 自分の山や実家の土地になら、自由に散骨できますか?
所有地であれば、法律上は散骨できます。ただし自治体によっては、散骨場の許可制や、地域によっては散骨そのものを禁止する条例を定めている場合があります。事前に市区町村の窓口へ問い合わせてください。
Q. お墓から出した遺骨を山に散骨したい場合、手続きは必要ですか?
墓地の管理者が遺骨を出す条件として改葬許可証を求めることが多く、実務上は取得することになりがちです。対応は自治体で分かれるため、お墓のある市区町村に問い合わせてください。
まとめ
山への散骨は、あとから訪ねられる場所が残ること、管理費がかからないこと、故人の生前のつながりを場所として形にできることが、海とは違う魅力です。そのうえで、撒く場所が誰の土地かという点だけは、事前に必ずクリアしておく必要があります。
自分の所有地で行う、土地の所有者から許可を得る、業者が所有する土地を利用する。どの方法を選ぶにしても、土地の権利関係がはっきりしていることが前提になります。個人で条件を整えるのが難しい場合は、業者が所有する土地に散骨できるプランを使えば、この部分をまるごと任せられます。
この記事について
手元供養専門店|創業2000年
手元供養の専門店として25年。遺骨の供養に関するさまざまなご相談をいただくなかで、散骨についてのお問い合わせも多くあります。その経験をもとに、山への散骨について詳しくお伝えしています。
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