著者紹介
手元供養専門店|創業2000年
手元供養の専門店として25年。遺骨の供養に関するさまざまなご相談をいただくなかで、散骨についてのお問い合わせも多くあります。その経験をもとに、海洋散骨の手続きと当日までの流れについて詳しくお伝えします。
海洋散骨を決めたあと、たいていの方が同じところで手が止まります。何から始めればいいのか、が分からないのです。役所に届け出るのか。書類は要るのか。遺骨は骨壷のまま渡していいのか。
散骨そのものに、役所の許可も申請もありません。ここは拍子抜けするほど何もない。ただし業者に頼む段になると、用意する書類と、踏む順番が出てきます。この記事は、申し込みから粉骨、当日、そのあとまでを、手を動かす順に並べたものです。
費用の内訳は海洋散骨の費用・料金相場、業者の選び方は海洋散骨とは?完全ガイドにあります。ここでは手続きだけを扱います。
全体の流れ|6つのステップ
業者に依頼する場合、大きな流れは次のとおりです。乗船しない委託(代行)散骨では、当日の乗船がない分だけ工程が短くなります。
| ステップ | やること |
|---|---|
| ① 相談・見積もり | プランと海域を相談し、見積もりを取る |
| ② 申し込み・契約 | 申込書・同意書などを提出し、書類を準備する |
| ③ 遺骨の引き渡し | 持ち込みまたは郵送で遺骨を預ける |
| ④ 粉骨(パウダー化) | 2mm以下に粉骨。無害化処理を行う場合も |
| ⑤ 散骨当日 | 乗船プランは出港・散骨・献花。委託は業者が代行 |
| ⑥ 報告書の受け取り | 日時・海域・写真の記録を受け取る |
申し込みから当日まで、ふつうは数週間、長ければ1〜2か月かかります。乗船プランは天候次第で日が動くので、予定はゆるめに。ここから、一つずつ見ていきます。
ステップ①・② 申し込みと、そろえる書類
散骨に「役所の手続き」は不要
もう一度書きますが、散骨に、役所へ出す許可申請や届け出はありません。お墓や納骨堂に納める「埋葬」なら墓地埋葬法の手続きがついてきますが、海に撒くのは法律のいう「埋蔵」にあたらない。だから、その枠の外にあります。法律面の詳しい話は散骨に関わってくる法律とは?にまとめました。
では書類はゼロかというと、そうもいきません。業者はほぼ必ず、身元確認の書類を出すよう求めてきます。役所に出すものではありません。その遺骨が事件性のない正当なものだと業者が確かめ、手元に残しておくための書類です。
業者に提出する主な書類
様式は業者ごとにばらばらですが、よく求められるのは次のあたりです。
- 申込書:業者所定の様式
- 家族・親族の同意書:後のトラブルを防ぐため、近しい親族の同意を確認する書類
- 火葬許可証(埋葬許可証)のコピー:遺骨の身元を確認するための書類
- 申込者の身分証明書のコピー
- 乗船名簿:乗船プランの場合
本人が生前に自分で申し込むなら、遺言書やエンディングノートの写しを添えさせる業者もあります。戸籍謄本の写しを求めるところもある。要するに、何を出すかは業者によってかなり違います。
「火葬許可証」と「埋葬許可証」は同じ書類
混乱しやすいのですが、火葬許可証と埋葬許可証は、実は同じ一枚の紙です。死亡届を役所に提出すると火葬許可証が発行され、火葬場で火葬を終えると、この書類に火葬済みの印が押されます。印が押されたものが、そのまま埋葬許可証として扱われます。地域によって「埋火葬許可証」など呼び方が変わりますが、指しているものは同じです。
すでに納骨している方は、この紙を納骨のときに墓地の管理者へ渡しているはずです。手元にないのが当たり前で、そのときは次に説明する改葬の手続きに入ります。見当たらなければ、火葬した地域の役所に再発行を相談してください。
墓じまいをして散骨する場合の手続き
すでにお墓に入っている遺骨を出して散骨するなら、話は少し変わります。ここは自治体で対応が割れる、つまずきやすいところです。
散骨は「改葬」にあたらないが、実務では改葬許可証が要ることが多い
法律上、改葬とは「埋葬した遺骨を、別のお墓や納骨堂に移すこと」を指します。散骨は新たに埋葬するわけではないため、厳密には改葬にあたらず、役所への改葬許可申請は原則として不要と解釈されています。
ところが現場は、そう単純ではありません。お墓から遺骨を取り出すとき、墓地やお寺の管理者が、改葬許可証を出せと言ってくることが多い。これがないと遺骨は出せない、墓石も動かせない——そういう運用をしている管理者が、実際かなりいます。勝手な掘り起こしを防ぐための歯止めですね。
やっかいなのは、その改葬許可証を出す役所側の対応も、自治体でばらつくことです。「散骨なら要らない」という役所もあれば、「念のため申請を」というところ、「申請しないと遺骨は出せない」と突っぱねるところもある。結局、お墓のある市区町村へ電話するのが一番早い。遠回りに見えて、これが確実です。
改葬許可証を取る場合の流れ
改葬許可証が必要な場合は、次の順で進めます。改葬という制度そのものについては改葬っていったい何?墓じまいとは違うの?もあわせてご覧ください。
- お墓のある市区町村で「改葬許可申請書」を入手する(自治体サイトからダウンロードできる場合も)
- 現在の墓地管理者から「埋葬証明書」を発行してもらう(申請書に管理者の署名欄がある場合も)
- 申請書を役所に提出し、「改葬許可証」の交付を受ける
改葬では本来もう一つ、移転先が発行する「受入証明書」が要ります。ただ散骨は納める先がないので、これは原則いりません。ここも自治体で扱いが分かれるため、申請先に確認を。墓じまい全体でいくらかかるかは墓じまいの費用にまとめています。
一点だけ。遺骨の一部を手元供養として残すつもりなら、その分の扱いも役所に聞いておいてください。将来その遺骨を納骨する可能性があると、あとで証明書類を求められることがあります。
ステップ③ 遺骨の引き渡し|持ち込みと郵送
書類がそろったら、遺骨を業者に預けます。方法は持ち込みと郵送の2つです。
郵送できるのはゆうパックのみ
遠方の業者なら、遺骨を送ることになります。ここで一つ。遺骨を送れるのは日本郵便のゆうパックだけです。ヤマトも佐川も、約款で遺骨を引き受けていません。紛失しても対応できない、というのが理由です。この「送骨(そうこつ)」自体は、いまではごく普通に行われています。
梱包で大切なのは「割れない・濡れない・動かない」の3点です。骨壷のふたをテープで固定し、緩衝材で隙間なく包み、段ボールに詰めます。送り状の品名には「遺骨」と記入し、割れ物の指定をしておきます。書類の同梱を求める業者もあるので、指示に従ってください。多くの業者が、梱包用のキットや詳しい手順を用意しています。
古い骨壷は水がたまっていることがあります。送る前に、水漏れ対策も忘れずに。なお海外へは送れません。ゆうパックは国内だけです。
もう一つ、これは知らない人が多いのですが、ゆうパックで遺骨を送っても、遺骨自体は損害賠償の対象になりません。遺骨に金銭的な価値がないためで、万一のとき補償されるのは骨壷などの分だけです。気になるなら、セキュリティサービス(郵便局の窓口でのみ付けられます)を使う手があります。
ステップ④ 粉骨(パウダー化)
海洋散骨では、遺骨をそのまま撒くことはできません。2mm以下の粉末状にする「粉骨」が必須です。これは、拾った人が遺骨と気づいて驚いたり、通報につながったりするのを防ぐための配慮であり、業界ガイドラインでも定められています。
粉骨をすると、遺骨の容積はおよそ3分の1から4分の1まで小さくなります(業者によっては5分の1程度まで細かくするところもあります)。粉骨後は、海へ沈みやすい水溶性の袋に小分けして保管されます。この袋ごと海に投じることで、風で舞い散るのを防ぎます。
粉骨は自分でやらず、業者に任せる
粉骨は自分でもできます。ただ、家庭の道具で2mm以下まで均一に砕くのは無理があり、なにより心情的にこたえます。散骨プランに粉骨が含まれることも多いので、まず確認を。粉骨だけを請け負う専門業者もあります。粉骨そのものの意味は粉骨で解決することがありますで書きました。
六価クロムの無害化処理
粉骨のときについて回るのが六価クロムです。火葬炉のステンレス製の架台が高温にさらされると生じ、遺骨に付着することがあります。水に溶けやすいため、環境基準(0.05mg/L以下)を超えるなら、無害化してから海へ還すのが望ましいとされる。JOMA(日本海洋散骨協会)のガイドラインも、この処理を推奨しています。
どの遺骨にも入っているわけではなく、検査して初めて分かります。気になるなら、粉骨を頼むときに「検査と無害化はやっていますか」と一言。処理結果を証明書に残す業者もあります。遺骨の汚れが気になる場合は、粉骨の前にクリーニングを挟む手もあります(ご遺骨、このあとどうする?で解説しています)。
ステップ⑤ 散骨当日
乗船プランの当日の流れ
合同散骨やチャーター散骨では、指定の港に集合して出港し、漁場や航路、海水浴場を避けた沖合まで進んで散骨します。到着したら、水溶性の袋に入れた遺骨を海へ還し、あわせて献花や献酒を行って故人を見送ります。出港から帰港までの時間は、海域や業者でまちまちです。近い海域なら往復1〜1.5時間、たいていは2〜4時間くらいを見ておけば足ります。
船上でできることは、揺れの都合で限られます。それでも、故人が好きだった音楽を流したり、花を手向けたりと、業者と相談しながら見送りの形を整えられます。
服装と持ち物
案外みなさん迷うのが服装です。喪服はいりません。それどころか、桟橋周辺への配慮や船上の安全を理由に、喪服・礼服での乗船を断る業者もあります。船は揺れ、海上は季節によって陸より驚くほど冷えます。動きやすく暖かい平服、足元は滑りにくい靴。ヒールやスカートは避けてください。船酔いしやすい人は、酔い止めを乗船の30〜60分前に。飲むのが乗ってからだと効きません。日差しと潮風もあるので、羽織るものと帽子があると助かります。
委託(代行)散骨の場合
遺族が乗らない委託散骨は、当日の作業をすべて業者が代行します。あとから写真と報告書が届きます。立ち会わない分、散骨する海域や当日の段取りを事前に業者と共有しておくと、あとで様子を思い描けます。
ステップ⑥ 報告書の受け取り
散骨後、業者から報告書が届きます。内容は業者によって差があり、写真のみのところもあれば、散骨した日時・海域の緯度経度・当日の様子まで記録されているところもあります。
委託散骨だと、この報告書が実施を確かめられるほぼ唯一の記録になります。親族に経緯を説明するときにも使えます。発行の法的義務はありませんが、どこまで書いてくれるかは業者でかなり差が出ます。選ぶ段階で見ておく価値があります。
手続きを始める前に決めておきたいこと
ここまで手順を追ってきましたが、粉骨の前に一つだけ、立ち止まって考えておきたいことがあります。遺骨を全部撒くのか、一部を手元に残すのかです。
粉骨して海へ還した遺骨は、二度と戻せません。散骨を終えてしばらくしてから「手を合わせる場所がなくて寂しい」と感じる方は少なくなく、そのときにはもう選び直せません。全部撒くか全部残すかの二択ではなく、大半を海へ還し、ごく一部だけを遺骨ペンダントやミニ骨壷に納めておくという方法もあります。
決めるなら、粉骨を頼む前に。そのタイミングで分けておけば、費用も手続きもほとんど変わりません。手続きに入る前に、家族で一度だけ話しておいてください。
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よくある質問
Q. 散骨するのに、役所への届け出は必要ですか?
散骨に、役所への許可申請や届け出はありません。ただし業者に頼むなら、身元確認として火葬許可証(埋葬許可証)のコピーなどを求められます。これは役所ではなく、業者に渡す書類です。
Q. 火葬許可証が手元にありません。どうすればいいですか?
すでに納骨していれば、この書類は墓地の管理者に渡っているはずです。手元になければ、火葬した地域の役所で再発行を相談してください。本人確認書類を持参し、先に電話で「いつ、どこで火葬した遺骨か」を伝えておくと早いです。
Q. 墓じまいをして散骨します。改葬許可証は必要ですか?
法律上、散骨は改葬にあたらないので、役所への改葬許可申請は原則いりません。ただ、遺骨を取り出すときに墓地やお寺の管理者が改葬許可証を求めることが多く、結局は取得することになりがちです。対応は自治体で分かれます。お墓のある市区町村の役所に必ず確認してください。
Q. 遺骨をそのまま撒くことはできますか?
できません。海洋散骨では、遺骨を2mm以下に粉骨してから撒くと業界ガイドラインで定められています。粉骨は業者に頼むのが普通で、散骨プランに含まれることも多いです。
Q. 遺骨を郵送で預けることはできますか?
できます。ただし送れるのは日本郵便のゆうパックだけで、ほかの宅配業者は遺骨を扱いません。「割れない・濡れない・動かない」を意識して梱包します。梱包キットや手順を用意している業者が多いので、その指示に沿って準備してください。
Q. 当日の服装は喪服ですか?
喪服はいりません。船は揺れ、海上は冷えます。動きやすく暖かい平服に、滑りにくい靴を。船酔いしやすい人は、酔い止めを乗船の30〜60分前に飲んでおいてください。
まとめ
散骨そのものに役所の手続きはいらない。けれど、業者に出す書類、墓じまいなら改葬許可の確認、粉骨、当日の支度と、順に片づける段取りはあります。なかでも改葬許可は自治体で対応が割れるので、早めに役所へ一本電話を入れておくのが確実です。
そして粉骨の前に、一度だけ立ち止まってください。全部撒くのか、少し残すのか。ここだけは、あとから戻せません。手順そのものは、難しくありません。一つずつ確かめれば済む話です。
この記事について
手元供養専門店|創業2000年
手元供養の専門店として25年。遺骨の供養に関するさまざまなご相談をいただくなかで、散骨についてのお問い合わせも多くあります。その経験をもとに、海洋散骨の手続きと当日までの流れについて詳しくお伝えしています。
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